早くも11月になり、晩秋の頃を迎えています。
肌寒くなりましたが、皆様はお風邪など召していらっしゃいませんか?
昨日久しぶりに実家に帰り、ご近所の方から大量の柿を頂戴しました。
庭木に生った物ですので、小さく所々にキズも有るのですがとても甘く素朴なおいしさです。
また、その豊かな色は秋の実りを象徴する色の代表ですね。
ところが、日本の伝統色で「柿色」と言うとこれほど鮮やかな黄赤色ではありません。
もっとくすんだ、にぶい色です。
それは柿の実の色からではなく、渋柿の実をまだ青いうちに取り、砕いて染料にした「柿渋染」に由来しているから。
◆柿渋染め◆
また、弥生時代から食べられていた柿ですが、甘柿の登場は鎌倉時代になってからです。
それ以前は渋柿を干柿や熟柿にして食べられ、平安時代には宮廷菓子として出されていたそうです。
ということは、高貴な身分の人にとっては干柿になって、くすんだ色が柿の色だったのかもしれませんね。
しかし、柿本人麻呂の名の由来が、庭に柿の木があったから・・・との説もあり、御所の中にも柿の木はあったそうですから、貴族たちは柿にあまり興味が無かったというのが真実のような気がします。
(あれだけ自然を題材に多くの歌が詠まれた万葉集にも、柿の歌は一つもないことですし・・・)
そして、現代でも歌舞伎の定式幕に欠かせない色として使われています。
中村座と市村座、森田座それぞれ三色の組合せがありますがすべて「柿色」が使われています。
こちらの方が現代の「柿色」に近い鮮やかな色ですね。
歌舞伎と「柿色」にまつわる話は他にもありますが、それはまたの機会に。
今回は、いただき物の柿からたどり着いた、「今とは違う伝統色の柿色のお話」でした。